ヒップホップダンスを基本から学んで、27日間でプロ並みに上達する方法。

ダンスにまつわるエピソード(その6)

(※とある男性の手記です)

 

お前、ダンスは好きか?嫌いか?

 

それが、先輩と初めて会った日、最初に掛けられた言葉だった。突然なんなんだろう、と訝しく思ったことはおくびにも出さずにボクは、好きでも嫌いでもないです、と無難な答えを返した。

 

好きか嫌いかって聞いてんだよ、白か黒かって質問に、グレーって答えんなよ、先輩はそう言って、眉を吊り上げた。初対面から随分と手厳しい人だな、と思ったあの時のボクの驚きと心臓の鼓動。今でも思い返すと身が引き締まる。

 

先輩がその道、つまりヒップホップダンスの世界ではそれなりに名が通った人であるということを知ったのは、その翌日だった。先輩を紹介してくれた友達が、ボクの目の前にバサッと、乱暴に一冊の雑誌を置いたのだ。開かれたそのページには、紛れもなくあの先輩の大きな写真と、インタビュー記事が躍っていた。

 

友達曰く、何事にも厳しく、一切の妥協を許さない人で、それがキレッキレのダンスにも表れているということだった。なるほど、昨日交わした会話を振り返ってみれば、それは何となく分かる。だけど、そんな性格が、ダンスにも出ちゃうんだね、とその時は笑った。

 

後日、その先輩のダンスを間近に見る機会があった。度肝を抜かれるとはああいうことを言うのだろう。いや、それすら手緩い表現かもしれなかった。ボクは驚きや感動を通り越して、恍惚状態となった。友達に話しかけられても、夢心地で、文字通り口をポカンと開けたままだった。

 

こんな凄い人に、ダンスが好きか嫌いかと聞かれて、どちらでもないなどという中途半端な返事をした自分を、心から恥ずかしく思った。そして1秒でも早くその無礼を詫びたかった。それくらいの衝撃だった。友達がキレッキレって言ってたけど、バカお前、そんなもんじゃないよこれは!

 

ダンスなどほとんど縁が無かった自分が、先輩の厳しい指導を受ける決意をするまでに、さして時間はかからなかった。今ボクは、先輩を中心とするとあるヒップホップグループの一員として、充実した日々を送っている。

 

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