ダンスにまつわるエピソード(その3)
とある著名なトッププロ・ヒップホップダンスチームのメンバーが、「自分のダンスがスランプというか、納得がいかない時期があって、ダンス自体を止めようと思ったことがある」と激白したことがあります。
トッププロであってもそんなことがあったんだ・・・と妙に親近感を覚えてホッとした記憶がありますが・・・。
とはいえ、恐らく素人である私には想像もつかないような次元での話なのでしょう。トッププロになると、自分の理想に対するほんの数センチ、いや、数ミリの動きの違いで、違和感を覚えたり、納得がいかなかったりするものなのかもしれません。
さて、その人、どうやってそのスランプを乗り越えたのか。
その時期、たまたま舞い込んできたドラマや舞台の仕事、つまり俳優の仕事に挑戦することで、復活のきっかけを掴んだと言います。要するに、ダンスを少し離れ、別のことに没頭することで、新たな気付きがあったというのです。
もちろん、全く関係のないことをしても、なかなか気付きは得られないかもしれません。俳優という、演技・パフォーマンス・表現などといった意味では共通するものであったからこそ、何かしら復活の気付きが見つかったのだとも考えられます。
事実、俳優をすることで身に付いた表現力は、ダンスにおいても見事に生かされていると、自身が語っています。
トッププロと言えども、やはり人間。そしてもちろん、最初は素人だったのです。つまり極論を言えば、トッププロであってもアマチュアの延長線上にいる訳です。そこには、類い稀なる才能と、尋常ならざる努力、そして人知れぬ葛藤があったことは間違いありませんが、それでもやはり、プロでも苦労しているだな、自分と同じように頑張っているんだな、と思える瞬間が、私のような素人を動かす大きなモチベーションになり得ることは、否定出来ないのです。